1. はじめに
日本の都市部ではインバウンド回復が続き、短期賃貸と民泊の収益性が再評価されています。本稿は投資家向けに、法令順守と数値設計を両立させる枠組みを示します。
2. 法令と管理規約の確認
運用形態により根拠法が変わります。住居の延床を活用するなら住宅宿泊事業法、常時宿泊を想定するなら旅館業法が中心です。加えて区分マンションは管理規約で短期賃貸が制限される場合があります。契約前に用途地域と管理組合の決議履歴を原本で確認し、消防設備と避難経路の適合も証憑で保持します。
3. 立地と物件スペック
想定ゲストの移動動線に合わせ、駅徒歩5分から8分、25から35㎡のワンルームから1LDKが汎用性に優れます。無人チェックインに対応できる宅配ボックスと共用ネットワークの安定性は稼働に直結します。音環境を保つため防音性能と近隣説明を初期計画に組み込みます。
4. 参考収支モデル
価格3200万円、自己資金20%、金利年1.5%、期間30年。平均客単価1万2000円、稼働65%、月間日数30と仮定します。売上は1万2000×0.65×30=23万4000円。OTA手数料を12%、清掃3万3000円、光熱費1万8000円、消耗品5000円、リネン6000円、管理費と修繕積立1万2000円、保険1000円、その他2000円で運営費計10万5000円。NOI12万9000円。元利均等返済は月額概算8万8400円、税引前キャッシュフローは4万600円。年間NOIは154万8000円で想定利回り約4.8%。本数値はあくまで例示です。
5. 感度分析の目安
稼働1ポイントの上下で月次売上は約3600円変動します。客単価1000円の上下で月次売上は約1万9500円変動します。意思決定はこの感度を基準に賃料設定と広告投下を調整します。
6. 運用オペレーション
セルフチェックイン、騒音センサー、スマートロック、PMS連携を標準化し、清掃は写真検収と在庫カウントで可視化します。レビュー改善には48時間以内の返信と滞在前の到着確認が効果的です。近隣には苦情受付先と夜間静粛時間を明示して摩擦を回避します。
7. 出口とバックアップ
規制変更やシーズナリティに備え、同一物件で長期賃貸へ転用できる間取りかを事前に評価します。例えば長期賃料12万円、管理委託5%を想定すると、手残りは運営費と返済後でも約1万3600円の余力が見込めます。売却時は稼働データと連続黒字の試算表を提示すると価格交渉が進みやすくなります。
8. まとめ
短期賃貸は立地、法令順守、運営の標準化、数値検証が収益の柱です。取得前に証憑と感度をそろえ、取得後は運用指標を週次で点検する体制を構築してください。

