日本では、法人を設立して不動産を取得・運用するケースが増えています。法人化は節税や資産管理の観点で有効ですが、登記・税務・融資の面で個人購入とは異なる注意が必要です。
1. 法人設立と資本金の考え方
不動産取得を目的とする法人の資本金は、金融機関の信用を得るうえで重要です。最低でも500万円以上を目安とし、登記時には法人登記簿謄本と定款が必要になります。
また、会社の目的欄には「不動産の取得、保有および賃貸」を明記しておく必要があります。
2. 資金調達と融資の違い
法人名義での融資は、個人に比べて審査が厳格になります。金融機関は法人の決算書や代表者の信用情報を確認し、返済能力を総合的に判断します。
新設法人の場合、代表者の連帯保証が必須とされることが多く、自己資金は物件価格の2~3割を用意するのが一般的です。
3. 税務上のメリットとデメリット
法人で物件を保有すると、経費計上の範囲が広がります。たとえば、管理報酬、出張交通費、車両費などが経費として認められるケースがあります。
一方で、利益が小さくても法人住民税(最低約7万円/年)が発生します。また、個人と異なり決算申告が年1回必須のため、税理士費用も考慮が必要です。
4. 実例:賃貸用マンションを法人購入した場合
設立資本金1,000万円の法人が5,000万円の賃貸マンションを取得したケースでは、経費を含めた年間利益300万円に対して法人税約23%、実効税率では約30%前後となります。個人の高所得者層であれば、法人化により5~10%程度の税負担軽減が見込めます。
5. まとめ
法人名義での不動産購入は、資金計画・税務設計・登記準備の三点を慎重に進めることが成功の鍵です。特に初年度は、税理士と金融機関の両方と早期に連携することで、資金調達と節税効果を最大化できます。

