物件を取得したら火災保険の加入は実務上の必須事項です。法令で義務ではないものの、金融機関の融資条件や管理実務の観点から事実上の前提になります。地震保険は火災保険に付帯してのみ加入可という設計で、建物と家財を分けて考えます。保険は保険料を払うコストではなく、NOIと資産価値を守る仕組みという視点で設計すると判断がぶれません。
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1. 補償範囲の基本とよくある誤解
火災保険は火災だけでなく、落雷 破裂 爆発 風災 雹災 雪災に加えて、集合住宅で頻出する水濡れ損害や盗難 破損汚損まで対象にできる商品設計があります。建物と家財は別管理で、オーナーは建物中心 家具付き運用では家財も検討が必要です。
地震保険は火災保険に付帯で加入します。保険金額は火災保険の30%から50%の範囲で設定し、地域 建物構造等級により保険料が変わります。木造よりRC造のほうが一般に料率は抑えられます。
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2. 金額 期間 免責の設計
保険期間は現在最長5年が一般的です。長期一括契約で保険料の割引が効きます。
建物の保険金額は再調達価額を基準に設定し、時価で安く抑えると事故時に不足が出がちです。
地震保険は前述の上限内で金額を決め、免責金額を1万円から10万円程度で調整して保険料とバランスさせます。
目安として区分マンション一室の火災保険は年額1万円から5万円程度のレンジで推移し、所在地 構造 面積で上下します。
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3. 請求の進め方 実務の勘所
発生したらすぐ連絡 写真は全景 近景の双方を撮影します。天井であれば部屋四隅を含む全景と、シミの近景を押さえます。
修繕前に保険会社の指示を確認します。仮復旧は養生にとどめ、見積は2社取得が理想です。
集合住宅の共用部分に及ぶ場合は管理組合や管理会社に並行連絡します。上階からの漏水は加害行為の有無で賠償ルートが変わるため、自社保険で先行し後日求償という流れを想定しておくと処理が速く進みます。
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事例紹介
都内の1Kで上階の配管から漏水が発生 天井と壁クロスが変色 建物火災保険の水濡れ損害で申請 見積22万円 免責2万円 写真と見積2社分を提出し18万円支払い決定 共用配管の修繕は管理組合負担で実施 入居者の生活復旧を優先して一週間以内に仮補修を完了し家賃減額は発生せず
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まとめ(Takeaway)
保険は補償範囲 金額 免責 期間の四点を軸に、NOIの下振れをどこまで許容するかで設計します。証拠写真 見積 連絡記録を平時からテンプレ化しておけば、事故時の対応が数日単位で短縮します。火災保険に**地震保険30%から50%**を添えて、再調達価額と免責のバランスを定期見直しするのが実務的です。

