日本で不動産投資用法人を設立する: はじめの一歩と実務の勘所

2025.7.11

目次

日本の不動産を個人名義で保有すると、税金・資金調達・相続の各面で思わぬ不利が生じることがあります。こうした課題をまとめて解決できる手段の一つが、投資用法人の設立です。以下では、合同会社(GK)と株式会社(KK)の選択ポイントから設立手続きまで、実務の流れをわかりやすく整理します。


1. 法人化を検討すべき理由

リスク限定: 責任を法人に閉じ込め、万一のトラブルを個人資産に波及させない。

税務の柔軟性: 経費計上できる範囲が広がり、損失の繰越控除も可能。

融資と資金調達: 銀行は法人への融資を組みやすく、共同出資スキームも組成しやすい。

承継の簡素化: 不動産そのものではなく株式を譲渡すれば、登記コストや税負担を抑えられる。


2. GK と KK をどう選ぶか

初期コストとスピードを優先するなら GK

公証人の定款認証が不要で、設立費用はおよそ 10 万円前後。

経営ルールを定款で柔軟に設計できる。

対外的な信用力や将来の大規模調達を視野に入れるなら KK

取締役会などの形式要件がある反面、銀行や取引先からの印象が良い。

決算公告が必要だが、電子公告で低コスト化が可能。


3. 設立ステップと目安タイムライン

①基本事項の確定(商号・本店所在地・資本金・事業目的)

②定款の作成:英語併記にしておくと国際的なやり取りがスムーズ

③公証人認証(KK のみ)

④資本金の払込:最低 1 円でも可だが、銀行審査を考慮し 100 万円以上が安心

⑤登記申請:法務局へ提出し、おおよそ 1 週間で完了

⑥銀行口座開設:実質的支配者(UBO)の本人確認が厳格。パスポートや入国履歴などを準備


4. 代表者住所と在留資格のポイント

登記上は日本在住でなくても代表取締役に就任できるが、銀行との取引では国内連絡先が求められることが多い。

ビジネス・マネージャー在留資格を取得する場合、資本金 500 万円以上とオフィスの賃貸契約が目安になる。


5. よくある落とし穴

事業目的に「売買・賃貸・管理」などを漏らすと後から追加登記が必要。

消費税の免税期間(設立から最長 2 期)を過信し、早期に課税事業者になるケース。

不動産案件の国際経験が少ない専門家を選んでしまい、手続きが長期化する。


6. ショートケース

資本金 300 万円で GK を設立し、大阪市内に民泊物件を保有した投資家の例。定款に「旅館業・不動産管理」を明記し、税理士が為替リスクを含めたキャッシュフローを管理。結果、手取り利回り 5 %超を達成した。


まとめ

法人化はコストではなく「リスクヘッジと税効率化への投資」です。 小規模では GK でスピーディに立ち上げ、資産規模が大きくなった段階で KK へ移行する二段階戦略も有効です。

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