購入した区分マンションや戸建を民泊運用する前提で、固定費の定義と分岐点計算を組み直します。家賃前提よりも固定費が増える一方、長期の見通しが立てやすくなります。
1. 購入運用の固定費
月次の固定費に含めるのはローン返済(元利合計) 固定資産税と都市計画税の月割 管理費と修繕積立金 火災保険の月割 インターネットと基本光熱。減価償却は現金支出ではないため、キャッシュの損益分岐には入れません(節税効果の評価では別途考慮)。
2. 変動費と指標
変動費は清掃費の一泊按分 消耗品 決済手数料等(売上の3%目安)。運営指標は稼働率 平均宿泊単価(ADR) RevPAR=ADR×稼働率。
分岐式は次のとおり。
損益分岐稼働率=固定費 ÷〔ADR − 変動費一泊〕 ÷ 月日数
損益分岐ADR=固定費 ÷ 稼働泊数 + 変動費一泊
3. ケーススタディ(購入前提の目安)
前提 ローン残高¥22,400,000 金利1.2% 期間30年 月返済約¥74,124 固都税月割¥11,667 管理費¥10,000 修繕積立¥8,000 火災保険月割¥1,000 通信¥5,000 基本光熱¥6,000
固定費合計約¥115,791
変動費 清掃¥6,000/回 平均滞在2.5泊 消耗品¥500/泊 決済手数料3%
ADR¥12,000のとき 変動費一泊¥3,260 余剰¥8,740 必要泊数約13.25泊 必要稼働率約44%
ADR¥9,000のとき 変動費一泊¥3,170 余剰¥5,830 必要泊数約19.86泊 必要稼働率約66%
4. 滞在長で分岐を下げる
平均滞在を3.5泊へ延長すると清掃の一泊按分は約¥1,714。ADR¥12,000なら変動費一泊約¥2,574 余剰約¥9,426 必要泊数約12.28泊 必要稼働率約41%。最小宿泊日数の設定は分岐点を下げる強力なレバーです。
まとめ
購入前提ではローン+税+管理費等の月次固定費をまず積み上げ、ADRと平均滞在を調整して〔固定費 ÷〔ADR − 変動費一泊〕〕を月30日で割る。分岐稼働率を50%台前半以下に落とせる価格と運用条件を設計できれば、繁閑差に強いキャッシュフローが期待できます。

